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2026年新春:待望の続編と新作が切り拓く映像表現の地平

2026年新春:待望の続編と新作が切り拓く映像表現の地平

年末年始、私たちは何を観るべきか。この問いは単なる娯楽の選択ではなく、2026年という時間を生きる意味への問いかけでもある。今回は、2026年1月30日に公開が決定した『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』、2025年3月7日公開の『ウィキッド ふたりの魔女』とその続編『ウィキッド 永遠の約束』(2026年3月公開予定)、そしてクリストファー・ノーラン監督の『オデュッセイア』を軸に、2026年新春映画の布置を読み解いていきたい。

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』――2026年1月30日、正義の問いが再び

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2025年10月10日、待ちに待った発表があった。『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』続編のタイトルが『キルケーの魔女』に正式決定し、2026年1月30日(金)に全国365館で公開されることが明らかになった。

2021年に公開された第一部は興行収入22.3億円を記録し、3ヶ月以上のロングラン上映となった。その圧倒的な映像美と、主人公ハサウェイ・ノアを中心とした心揺さぶる人間ドラマは、ガンダムシリーズの中でも異質な成熟を見せた。それは、宇宙世紀という架空の時空間を舞台にしながらも、テロリズムと正義、個人の信念と組織の論理という普遍的な政治的問題を、徹底的にリアルな筆致で描いた点にある。

続編『キルケーの魔女』では、ギギ・アンダルシアへの思慕が振り払えぬままマフティーとしての目的を遂行すべく行動するハサウェイと、マフティー殲滅の準備を進めるケネス、そして二人の運命をつなぐギギという、三者の運命が複雑に絡み合っていく。公開されたメインビジュアルには、大きく描かれたギギに抱擁されているかのようなハサウェイの姿が描かれている。小野賢章は「すべてが狂っている」というコメントを残しており、この世界に疑問を持つ男が、何が正義なのか、何のために戦うのかを一人で抱え込んで苦しむ姿が描かれることを示唆している。

重要なのは、この続編が単なる戦闘シーンの拡大ではなく、ハサウェイ・ノアという青年が選択した「マフティー・ナビーユ・エリン」としての生の、さらなる深化を描くことだ。原作である富野由悠季の小説では、ハサウェイの物語は極めて悲劇的な結末を迎える。彼は地球連邦政府の腐敗に対して武力による粛清を選択するが、その手段が目的を裏切る瞬間、つまり暴力がただの暴力として機能し始める瞬間を、私たちは目撃することになるだろう。

2021年のイベントでプロデューサーの小形尚弘は「第2部は、3部作の映画の中で一番小説と違った話になるかと思います」と発言している。原作からの大胆な改変が予想される中、監督の村瀬修功と脚本のむとうやすゆきのコンビは、前作で見せた繊細な心理描写をさらに深化させるはずだ。

なお、本作は日本以外の地域でも劇場上映されることが決定しており、グローバルな展開が期待される。また、映画公開を記念して、2026年1月6日から1月27日まで日本テレビ毎週火曜深夜「AnichU」枠でテレビエディション全4話が放送されることも発表されている。

『ウィキッド ふたりの魔女』から『ウィキッド 永遠の約束』へ――善悪の転倒が問うもの

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『ウィキッド ふたりの魔女』は2025年3月7日に日本公開され、累計興行収入35億円突破という大ヒットを記録した。第97回アカデミー賞では作品賞を含む10部門にノミネートされ、衣装デザイン賞と美術賞の2部門で受賞に輝いている。

『オズの魔法使い』の前日譚として、「西の悪い魔女」として知られるエルファバの物語を描くこの作品は、単純な善悪の図式を転倒させる。グレゴリー・マグワイアの原作小説、そしてスティーヴン・シュワルツの音楽によるブロードウェイミュージカル版は、すでに世界中で愛されてきたが、映画化はその視覚的表現において新たな次元を開いた。

監督はジョン・M・チュウ。『クレイジー・リッチ!』や『イン・ザ・ハイツ』で見せた、色彩豊かで躍動的な映像センスは、オズの世界観と見事に調和した。エルファバ役のシンシア・エリヴォ、グリンダ役のアリアナ・グランデという配役も、単なるスター起用ではなく、それぞれの歌唱力と演技力が物語の本質を引き出す選択だった。特に注目すべきは、この作品が普通のミュージカル映画では珍しく、歌と演技を別撮りしているわけではなく、実際に演技をしながら歌うという手法を採っている点だ。特に『Defying Gravity』のシーンでは、空中に浮いた態勢で歌うエルファバの姿が、その想いと覚悟をビシビシと伝えてくる。

そして2026年3月、続編『ウィキッド 永遠の約束』が公開される。2025年7月18日に日本版特報とティザービジュアルが公開され、前作を越える美しい世界観と壮大な物語が予感される内容となっている。前作で友情を築きながらも別々の道を歩むことになったエルファバとグリンダのその後の物語が描かれる。ジョン・M・チュウ監督が再びメガホンを取り、シンシア・エリヴォとアリアナ・グランデ、ジョナサン・ベイリーら豪華キャストも再集結する。

『ウィキッド』が提示するのは、「悪」とされる存在が、実は権力によって作り出されたラベルに過ぎないという認識だ。エルファバは緑色の肌を持って生まれたという理由だけで差別され、しかしその卓越した魔法の才能によって脅威とみなされる。彼女が「悪い魔女」になるのは、彼女自身の選択ではなく、社会がそう呼ぶことを選択したからだ。

この構造は、『閃光のハサウェイ』におけるマフティーの立ち位置と奇妙に共鳴する。連邦政府から見ればハサウェイはテロリストだが、彼の主観では正義の執行者なのだ。二つの作品は、異なる角度から同じ問題を照射している。

クリストファー・ノーラン『オデュッセイア』――映画史上初、全編IMAX撮影が切り開く神話空間

2026年、映画ファンが最も注目する作品の一つが、クリストファー・ノーラン監督の『オデュッセイア』だ。2025年7月10日に日本公開が正式に決定し、全米では7月17日の公開が予定されている。

西洋文学の金字塔とされる古代ギリシャの詩人ホメロスによる英雄叙事詩「オデュッセイア」を原作とした本作は、映画史上初めて全編をIMAXカメラで撮影した作品として注目を集めている。本作のために特別に開発された新技術が用いられており、世界各地(イギリス、モロッコ、イタリア、ギリシャ、アイスランド、スコットランド)で撮影が行われた。推定製作費は2億5000万ドルで、ノーラン監督のキャリア史上最も高額な映画となる。

主演は『インターステラー』『オッペンハイマー』に続きノーラン監督とタッグを組むマット・デイモンで、トロイア戦争を終えたイタケーの王オデュッセウスを演じる。トム・ホランド、アン・ハサウェイ、ゼンデイヤ、ルピタ・ニョンゴ、ロバート・パティンソン、シャーリーズ・セロンという豪華キャストが集結し、古代ギリシャ神話の壮大な世界を描き出す。

『オデュッセイア』は、トロイア戦争で戦ったギリシャ軍の英雄オデュッセウスが最愛の妻ペネロペと息子に再会するため、故郷のイタケー島を目指す長い旅の物語だ。その道中、オデュッセウスはキュクロープスのポリュペーモス、セイレーン、魔女神キルケーと遭遇しながら進む。公開されたティーザービジュアルには「神に抗え」という文字が刻まれており、人間の意志と神々の摂理の対立が描かれることを示唆している。

ノーランは『インセプション』で夢と現実の境界を、『インターステラー』で時間と次元の問題を、『テネット』で時間の逆行を、そして『オッペンハイマー』で科学と倫理の葛藤を描いてきた。古代神話という題材に挑む今作では、人間の尊厳と運命、自由意志と宿命という、より根源的な哲学的問題に挑むことになるだろう。

なお、2025年12月21日時点では、予告編は劇場限定公開のみとなっており、Youtubeなどにアップされた映像のほとんどはAIによる第三者作成のフェイクとなっている。

2026年新春、その他の注目作

この三作品に加え、2026年新春には他にも注目すべき作品が控えている。

邦画では、山﨑賢人主演、吉沢亮共演の『キングダム』シリーズ第5作目が公開予定。前作『キングダム 大将軍の帰還』に続く物語が描かれる。また、Snow Manの目黒蓮が主演する『SAKAMOTO DAYS』の実写映画化は、福田雄一監督がメガホンを取り、元凄腕の殺し屋だった坂本太郎の物語を描く。横浜流星と広瀬すずのW主演による『汝、星のごとく』は、凪良ゆうのベストセラー小説を原作とし、15年間に渡る男女の深い愛の行方を描く。

洋画では、メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ、エミリー・ブラントが再集結する『プラダを着た悪魔2』が2026年4月29日に全米公開予定(日本公開は未定)。前作から約20年後、ファッション業界の頂点と谷底を描く続編だ。また、ディズニー/ピクサーの『トイ・ストーリー5』は2026年6月17日にフランスで劇場公開予定で、バズ、ウッディ、ジェシーといったおなじみの仲間たちと電子機器の対決を描く。イルミネーションと任天堂による「スーパーマリオ」の新作アニメーション映画も2026年に公開予定だ。

UZの視点:映画が切り開く思考の地平

これらの作品群に共通するのは、単なる娯楽としての映画ではなく、私たちの思考を根本から問い直す装置としての映画だという点だ。

『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』が提示するのは、正義を実現しようとする行為そのものが新たな暴力を生むというパラドックスだ。ハサウェイは、連邦政府の腐敗した高官を粛清することで地球環境を守ろうとするが、その手段としてのテロリズムは、結果として多くの無辜の人々を巻き込む。彼の悲劇は、目的の正しさが手段を正当化しないという、倫理の根本問題に直面することだ。

『ウィキッド』が描くのは、物語そのものが権力によって書き換えられるという事実だ。エルファバの物語は、『オズの魔法使い』という「正史」によって塗り潰されている。しかし、その「正史」の裏側には、もう一つの真実がある。私たちが「悪」と呼ぶものの多くは、実は権力者によって都合よく名付けられた他者に過ぎないのかもしれない。

そしてノーランの『オデュッセイア』は、古代ギリシャ神話という最も古い物語形式を通じて、人間の自由意志と運命という永遠のテーマに挑む。オデュッセウスは神々の摂理に翻弄されながらも、自らの意志で帰郷を目指す。その姿は、運命に抗い、自らの道を切り開こうとする人間の本質的な姿勢を象徴している。

この三作品を同時期に観ることの意味は、正義と悪、自由意志と運命、個人の選択と社会の圧力という、異なる角度から同じ根源的な問題に迫ることにある。『閃光のハサウェイ』は政治的リアリズムの視点から、『ウィキッド』は物語論的転倒の視点から、『オデュッセイア』は神話的普遍性の視点から、人間存在の根本問題を照射する。

2026年の新春、私たちは映画館という暗闇の中で、これらの問いと向き合うことになる。それは単に楽しい時間を過ごすということではなく、自分自身が何を正義と呼び、何を悪と名付けているのか、その認識の枠組みそのものを問い直す経験となるはずだ。

映画は娯楽である。しかし同時に、映画は思考の実験場でもある。2026年新春の映画群は、私たちにその両方を提供してくれるだろう。暗闇の中で光を見つめながら、私たちは自分自身の信念と、その脆さに気づくことになる。それこそが、映画を観る本当の意味なのだ。

2026年新春注目作公開スケジュール

  • 2026年1月30日(金):『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』全国365館
  • 2026年3月:『ウィキッド 永遠の約束』
  • 2026年7月17日(米国公開):『オデュッセイア』(日本公開は2026年中)

 

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